第13回年会報告

日本ケミカルバイオロジー学会第13回年会は、2018年6月11日から13日の3日間、東京医科歯科大学鈴木章夫記念講堂にて開催されました。初日には大型台風の接近も心配されましたが、結局大きな交通機関の混乱もなく、無事終える事ができました。過去最多となる合計541名の方々にご参加いただきましたことを、厚く御礼申し上げます。
 本年会では、口頭43件、ポスター143件の研究発表に加え、合計9人の世界の第一線で活躍されている先生方に招待講演、特別講演を行っていただき、3日間を通じて活発な議論が交わされました。
 まず初日は、日本農芸化学会との合同シンポジウムで本学会の幕が開きました。日本において長い歴史を持つ農芸化学は、ケミカルバイオロジーと重なる部分も多い学問分野であり、両学会の交流を目的として本特別企画が実現しました。日本農芸化学会を代表して東原和成先生、河岸洋和先生、日本ケミカルバイオロジー学会を代表して有本博一先生、二木史朗先生の合計4名の先生方に以下の演題でご講演いただきました。また、2日目午後には清水重臣先生に招待講演を行っていただきました。

・東原 和成 先生(東京大学)
 「動物の行動を制御する化学感覚シグナル:バイオロジカルケミストリーかケミカルバイオロジーか?」
・河岸 洋和 先生 (静岡大学)
 「フェアリー化合物は新しい植物ホルモンか?」
・有本 博一 先生 (東北大学):
 「選択的オートファジー分解を可能にする低分子化合物」
・二木 史朗 先生 (京都大学)
 「ペプチドを用いた生理活性分子の細胞内送達」
・清水 重臣 先生(東京医科歯科大学)
 「ケミカルバイオロジーを用いた新規オートファジーの基礎研究と応用研究」

最終日午後には、国際特別セッションを企画いたしました。まず井上尊生先生、伊丹健一郎先生、上杉志成先生の3名の招待講演者の先生方に、最新の研究成果を英語でご講演いただきました。そして本年会の最後は米国Stanford大学化学科のCarolyn R. Bertozzi先生による特別講演で締めくくられました。免疫抑制性のSiglec受容体とシアル酸含有糖鎖リガンドとの相互作用を利用した全く新しいがん免疫療法のアプローチに関する研究について、たいへんエネルギッシュに語っていただきました。

・井上 尊生 先生 (Johns Hopkins University)
 「Generating force in living cells at will」
・伊丹 健一郎 先生 (名古屋大学)
 「Molecular chronobiology enabled by synthetic chemistry」
・上杉 志成 先生 (京都大学)
 「Self-assembling bioactive molecules」
・Carolyn R. Bertozzi先生(Stanford University)
 「Cancer immune therapy targeting the cell surface glycocalyx」

ポスター発表に関しては、例年通り口頭でのショートプレゼンテーションも行っていただき、ポスターを前にした活発なディスカッションが行われました。審査委員の先生方による厳正な審査により、英国王立化学会(RSC)のサポートによる2件を含め、合計5名の若手の発表者にポスター賞が授与されました。

[RSC ポスター賞]](敬称略)
・小嶋 良輔(東京大学大学院医学系研究科)
  「細胞接触に伴う膜タンパク質の局在変化を利用した人工細胞機能のプログラミング」
・片浦 哲志(慶應義塾大学理工学部)
「バイオマーカーを指標とするパーキンソン病治療薬の探索とBET阻害剤JQ1による神経保護活性」
[ポスター賞](敬称略)
・吉矢 拓(株式会社ペプチド研究所)
  「アミノオキシ基を用いたpH依存的ペプチド自己切断反応の開発」
・田良島 典子(徳島大学大学院薬科学教育部)
  「mRNAの構造変化を誘起する中分子化合物の創製 -c-di-4’-thioAMPの合成とリボスイッチに対する結合親和性評価-」
・佐藤 伸一(東京工業大学科学技術創成研究院)
  「溶媒接触度依存的なチロシン残基修飾による抗体の部位選択的機能化」

最後に、多くのご支援とご高配を賜りました、協賛企業や助成財団、学会の関係者のみなさま、東京医科歯科大学ならびに理化学研究所のみなさまに、重ねて厚くお礼を申し上げます。